FEP(Frontal/Executive Program)は、ウィスコンシンカード分類テストやロンドン塔課題で低得点を示すような、前頭葉に機能障害を持つ方の認知機能を高めることを目的に開発されたプログラムです。
以前より神経心理学的および神経生理学的な研究によって、統合失調症の前頭葉機能障害の存在は明らかにされてきました。1987年にはスイスの精神科医であるBrennerにより、慢性期統合失調症に対する認知リハビリテーションが導入され、対人交流や社会機能といった上位レベルの機能障害の基本問題には、注意や知覚といった下位レベルの機能障害が存在するとし、認知、知覚、言語的コミュニケーション、社会技能、対人技能の順で階層的な治療プログラムが考案されました。
そのプログラムを基に1988年にオーストラリアのDr.Moriceらにより開発が進められたものが、現在のFEPになります。
ロンドン塔課題は計画能力を測るテストの1つであり、この課題が困難な者は前頭葉機能障害を示唆するとされています。そして、この課題に必要な神経心理学的要素には、「言語」「ワーキングメモリ」「視覚」「認知柔軟性」の4つの主要成分があることが明らかにされました(Morice & Delahunty, 1991)。
特に注意、配列、分類、推論、目的志向および方略形成、モダリティ内の多重課題、そしてワーキングメモリなどに関連した統制過程に焦点が当てられ、Moriceらはより効果的で、機能レベルに応じた様々なトレーニングモジュールを開発し、最終的には「認知的柔軟性」、「ワーキングメモリ」、「計画性」の3つのモジュールで段階付けられた階層的なプログラムとしてFEPを完成させました。
FEPの3つのモジュールは、注意、視知覚、視空間、言語、概念、巧緻運動といった一連のモダリティに基づき、前頭葉実行機能の認知プロセス、すなわち前頭葉・前頭前野神経系を直性刺激することを目指す、下位レベルから上位レベルへの階層的な構造として開発された唯一のプログラムになります。